日高新報
いやーもうホント衝撃です。
どの城跡調査でも「○○城跡に行きたいんですけど」って地元の人に聞くと、「あそこ何もないで」「あんなとこに行ってどーすんのよ」って言われるんですね。
たしかに姫路城や大阪城と比べて「何もない」なんです。
しかし城跡には今も建物があったであろう曲輪跡、土塁跡、城の出入り口(虎口)、斜面の移動をできなくする竪堀、尾根からの敵の侵入を防ぐ堀切が、400年以上経った今も残っているんです。
で、見る人が見たら、これが土塁で、これが曲輪でーってわかるんです。
それと、表面上は見えないけれども、土の中には城で生活していたころの陶磁器の破片、土師器といわれる土で作られた簡素な食器の破片、武具の一部、建物の柱の跡が発掘調査で出土します。
遺跡を破壊することは、もう二度と城跡でどのように生活していたか解明する手がかりを失ってしまったということです。
文化財 VS 防災
きっと町側は「工事が遅れてる間に大地震、津波が来たらどーするんだ!」と言うでしょうね。
いやいや、文化財保護法って法律があるんですから、法を守るべき公務員が率先して法を破ってどーするんだって話です。
それと、城跡まで登る登山道を定期的に草を刈ったり、簡易な照明器具を設置するだけでもずいぶん違うはずです。
やれることはやれたはずなのに、どーしてそうなった?と疑問符を付けざるを得ません。
今回の事件は、当該市町村だけに限らず、文化財と防災について改めて考えさせられるいい事例になったと、わたしは思います。
効率・有益が求められる世の中だけれど、文化的水準は町のブランドイメージを向上させる
文化財と防災施設を本にたとえてみるなら、文化財は小説、防災施設はビジネス書といったところでしょうか。
小説はすぐには生活に役に立ちません。娯楽的な要素も多分にあります。
一方、ビジネス書はそれを実践すれば多くの人の役に立ちます。
文化財は、今あなたが住んでいる街に、昔から人が暮らしてきた証であり、何百年も地域の人が協力して守ってきた地域の宝物です。
それを私たちの代で壊してしまうって、ちょっと惜しくありませんかね?
それに天路山城は湯河一族の城で、比高も高くないのでしっかり城跡公園として整備すれば、県外からも少なからず訪れる人もいると思うんですね。
日高町の名産は「クエ」。冬になると比井地区の民宿が活気づくし、夏は海水浴客でこの地域にぎわいます。
文化財は、その地域にしかないオンリーワンな宝物です。
今後残された天路山城跡を、有効に活用してほしいものです。