長年和歌山の城館跡を調査研究している「和歌山城郭調査研究会」が編集した『戦国和歌山の群雄と城館』が戎光祥出版株式会社から出版され、わたしも阿尾城、入山城、吉原御坊について執筆させていただきました。
戦国時代の和歌山には、武田信玄や上杉謙信のような大きな戦国大名はいませんでしたが、紀州守護で三管領家のひとつ畠山氏を筆頭に、室町幕府の直属部隊である奉公衆家の湯河・玉置・山本氏、水軍として活躍した安宅・小山氏、織田信長に対抗した雑賀衆、熊野三山や高野山、根来寺といった宗教勢力など非常にバラエティーに富んだ勢力があったのが特徴です。
和歌山県内に中世城館跡はどれくらいあるの?
現在、文献や伝承で確認されている和歌山県内の中世城館の数は735か所。
和歌山県内のコンビニの店舗数が369店舗(商業動態統計速報(平成31年1月分))なので、ざっと2倍の中世城館があるわけです。
前回和歌山県の中世城館に関する本『定本・和歌山県の城』が出版されたのは1995年7月なので、実に約24年ぶりの出版になります。
しかも、今回出版した『戦国和歌山の群雄と城館』は、非常にコンパクトなサイズなので、通勤途中でも電車の中で読んでいただけます。
できるだけわかりやすくをモットーに
今回、執筆段階で歴史や城跡に詳しくない方にもわかりやすく書いてくださいとのことだったので、あまり難しい言葉や考察を加えていません。
また、戦国和歌山というくくりの中で、南北朝時代に北朝方に攻められた湯浅城などは、守護畠山氏の城に所収されています。
ここ近年、和歌山県内の城跡発掘調査が相次ぐ
和歌山県内の中世城館の史跡登録や整備は全国的に見て少し遅れていますが、高速道路の建設や学術的な目的での発掘調査が行われる城跡も増え、次第にその城の当時の様子が明らかになりつつあります。
- 藤並城跡(和歌山県有田郡有田川町)
平成29年度に発掘調査を実施。幅13mの南側土塁内部に、幅3.5mの鎌倉時代に作られた土塁が確認される - 坂本付城(和歌山県西牟婁郡上富田町)
これまで所在地がわからず、幻の城と言われてきたが、平成30年度に発掘調査の結果、東西70m、南北100mの城跡であったことを確認した - 湯浅城跡(和歌山県有田郡湯浅町)
平成30年度の発掘調査で、4つの時代に区分される建物の礎石を検出。また焼土も見つかっている。 - 東城跡(和歌山県和歌山市)
平成29年度に道路建設に伴う発掘調査で、幅4mの堀跡が見つかる。
県指定史跡の城跡はまだまだ少ないけれど、良好な状態で残っている城跡がたくさんある!
さいごに、県や国の史跡に指定されている城跡は、まだまだ少ないのですが、日置川流域に点在する安宅氏の城跡群、岩室城・鳥屋城といった守護畠山氏の城郭、湯河氏の本城である亀山城、湯河氏と姻戚関係であった玉置氏の本城・手取城も良好な状態で残されています。
本書が和歌山県内のお城歩きのガイドブックとして使っていただけると、非常にうれしいです。
おまけ:こちらも必携!
和歌山城郭調査研究会顧問の水島大二氏の近著『和歌山の近世城郭と台場』では、和歌山城・田辺城・新宮城をはじめ、幕末に構築された台場跡も収録しています。