ここ近年の「お城ブーム」で、天守閣がないお城や土づくりの戦国時代の山城跡も注目されるようになってきました。
ただ、ブームになれば周辺の駐車場問題、ごみ問題、マナー問題、人が出入りすることによる遺跡の破壊など負の側面ももちろんあります。
とりわけ私が心配しているのは「山城跡での遭難問題」です。
WEB記事やSNSの投稿が充実して、図書館に行かなくてもどこにどんな城跡があるかわかるようになりました。
しかし、奥深い山中でなくても事故や遭難の危険性があります。わたしも下山するときにもと来た道がわからなくなってしまって、日没で暗くなって遭難しかけたことが1度だけあります。
この記事ではお城歩き歴20年のきゃろたまから、山城跡歩きの注意点をいくつかまとめてみました。
山城跡歩きの服装と持ち物
服装
上半身:長そでは夏でも必須。冬場ならウィンドブレーカーやブレスサーモで防寒対策。
下半身:長そでジーンズ、登山用のズボン。
くつ:トレッキングシューズ、スニーカー
ぼうし:あればなおよし。なければタオルで頭を覆う
暑さ寒さに応じて、セーターにするか軽めのものにするか、何枚重ね着するかは普段の生活での感覚でもいいですが、半そでですと、棘(いばら)や木のとげ、木の幹から突き出た枝などでけがをします。ですので、長そでは必須です。
それと、服の色は原色に近い赤、黄、紫などちょっと目立つ色の方がいいです。迷彩服は絶対にNGです。猟師に獲物と間違えられて鉄砲で撃たれかねません。
持ち物
- ミネラルウォーターやスポーツ飲料などの飲み物
夏場・冬場にかかわらず飲み物は熱中症対策で必ず必要です。 - おやつやお弁当
チョコレートやクッキー、シリアルなど荷物にならない程度のおやつ。
ごみは持ち帰りましょう。お弁当も歩く時間帯で必要です。わたしはお手洗い(大)をもよおさないために、城跡歩きを終えてから食べることが多いです。 - プリントアウトした地形図(地図)
山城跡歩きでもっとも気をつけなればらないのは「遭難」。つい夢中になりすぎて現在地を見失う可能性があります。また、携帯の電波が届かないところもあり、紙の地形図(地図)はなにかと重宝します。城跡の場所がわかっているはずなので、国土地理院のサイトで該当する城跡周辺の地形図を印刷して持参してください。 - 方位磁石(コンパス)
これも必要です。地図と方位磁石があれば、奥深い山中に迷い込むことを防げます。 - 携帯ラジオ・熊鈴
気分転換にもなりますが、あくまでも - タオル
- 虫よけ、消毒液
山城跡歩きのベストシーズンは11月から5月ゴールデンウィークまで
山城跡歩きに適した時期は、もちろん地域差はありますが、北陸・東北・北海道など降雪地帯を除けば、おおむね11月から5月ゴールデンウィークあたりまでです。
逆にゴールデンウィーク以降、10月末まではあまり山城跡歩きにには向きません。
というのも山の中、5月くらいから背の低い草が生えてきて、堀切や竪堀、土塁などの遺構の状態がよく確認できないからです。
冬場でも欠点が...それは猟と積雪
ただし、下草が生えていない冬場でも安全に山城跡の見学ができるわけではありません。
山城跡の多くは、まだ発掘調査をしているところも少なく、見学しやすいように整備されている山城跡はごく一部です。
とくに11月になると、狩猟がはじまり、山城跡に行く道や城跡内が猟場であることもあります。ですので、登る前に地元の人に出会えば聞いてみてもいいかと思います。
もうひとつは、東北・北陸・北海道など雪が積もりやすい地域では、山城跡歩きは避けましょう。歩いた先で雪にずっぽりはまってしまって思わぬ怪我や遭難する危険があります。
果樹園やキノコ林は泥棒に間違えられることも…
山城跡の多くは、民有地であることが多いです。でも「ここは○○の土地です!」って書いていればいいんですが、地主さんが判明しない、複数人いるところもあります。みかんや桃、さくらんぼなどの果樹園、松茸が取れる山を抜けて城跡にたどり着くこともあります。そのときに、泥棒に間違えられることもあります。
じゃあ、不法侵入ですよね?って言われてみると、そういわざるを得ないのも現状です。ただ、敵対心むき出しに来られる方は稀で、城跡を見学させてもらたいと言うと、多くの方は親切に接してくださいます。
タバコを吸われる方、山道は禁煙です!
先日、とある山城跡を見学させていただいて、地主さんにお会いしたのですが、たばこの火による山火事が一番怖いとのことです。くれぐれも山の中は火気厳禁、冬の空気が乾燥している時期は、簡単に燃え広がります。山道は禁煙でお願いします。
事前の下調べは必要!
最近では、訪城を記録する個人ブログやWEBサイトが多くできています。また、「縄張り図」といって山城跡の平面図が載せられているものもあります。これらも持参するとよりわかりやすく城跡見学ができます。
和歌山県内ですと、2019年2月に『戦国和歌山の群雄と城館』という書籍も出版されています。各都道府県単位で山城跡に関する本が出版されていることが多いので、ぜひご一読ください。
さいごに~決して無理は禁物!
山城跡歩きを安全に楽しむためには「決して無理をしないこと」。
縄張り図を見ると、この向こうにすごい大きな堀切があるはずだ!といざ行こうとすると、深いブッシュをかき分けなくてはいけないこともあります。また、図面を作成してから長い年月が経つと、途中の道が崩落してしまって行けないこともあります。
決して自分の体力を過信せずに、無理かもと思ったら引き返すことも大事です。
また、せっかく遠くまで来たのだからと予定を詰め込みすぎて、日没間際に登ると大変危険です。冬は早い時間から暗くなってきます。おおよそ午後3時には下山して、帰路につくことをおすすめします。
最近では、天守閣も建物も何もない山の中にある山城跡めぐりをされる方も増えてきています。どうかお怪我、事故なく安全に訪城してください。